社内で回覧されている業界紙が私のところにも回って来た。そこにはお付き合いのある卸売K社の社長インタビューが掲載されていた。

我々の業界に一石を投じることになったある講演会の話と、その講師に出逢ったきっかけ等が描かれている。

話は2015年に遡る。

このままでは業界が沈んでしまうと危機感を抱いていた2015年。我々の業界が自信を取り戻せるような小冊子の記事が私の目に留まった。

その記事は、ある企業の研究者で以前から研究論文を投稿されていたSさんが執筆。私はその内容に衝撃を受け、なぜこんな素晴らしい研究内容が我々の業界全体に広がらないのか疑問に思い、私の考えを上司の本部長に説明し、その方に会いに横浜まで出向いた。

私は横浜のオフィスでSさんの話の内容に完全に魅了され、ぜひ当社で講演会をして頂けないかをその場で要請した。後日その会社を通じて了承を頂き、1回目は本社で、2回目は研究本部で開催し、どちらの会議室も社員で満席となった。

このあたりから、業界が少しだけ前向きになってきたと思う。また、私の企画した講演会がきっかけで他の団体まで話が広がり、何社かの企業経営者がSさんを推してくれるようになった。講演会もあちこちで開催され始めたことから、私の判断は間違っていなかったと確信した。

その数年後、私が東京本社でパワハラでボロボロになり地元に戻ってしばらくして、Sさんから手紙と一緒に出版された本が同封されてきた。本を一気に読み終え、巻末の御礼の言葉に私の名前を見つけたときは本当に嬉しかった。

本社では本来の仕事で上手く立ち振る舞うことは出来なかった私だが、こういう数少ない幾つかの実績がなんとか今の私を支えている。